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■店主の分け前~バーマンの心にうつりゆくよしなしごと
 

第431回:流行り歌に寄せて No.231 「経験」~昭和45年(1970年)

更新日2021/10/21


タイトルと歌詞の内容が、なかなか容易に結びつかない曲というものがある。この曲などは、その典型なのだと思う。

けれども、辺見マリの容姿と声、そしていわゆるフィンガー・アクションはたいへんに妖艶であったので、当時「経験」という言葉にたいへんな好奇心を抱いていた私たち中学3年生にとっては、刺激的過ぎるタイトルではあった。

まさか、安井かずみが思春期の青少年をターゲットにしていたとは思えないが、性的な意味合いを込めたイメージのタイトルであることは間違いないと思う。

この時、辺見マリはまだ19歳。ドキリとするような色気を漂わせていた。当時「悩殺」という言葉が流行ったが、彼女の歌を聴いただけで、そんな感覚に捉われてしまった人も少なくなかっただろう。

私が最初に彼女を見た時の印象は、色気とかそういうことよりも、まず随分腰回りがしっかりとした女性だなあというものだった。どっしりとしているのである。

辺見マリは昭和25年(1950年)10月5日生まれ。京都育ちで、4歳の頃からバレエを習い、小学校の頃は、将来バレリーナになることを夢見ていたという。

そのバレエで舞台に立った京都会館に、平安高校1年生の時にたまたま遊びに行った際、ナベプロの「新人スターパレード」が行なわれており、そこでスカウトをされる。そして高校2年生の時に休学し、自動車免許を取得したばかりでホンダN360を運転して単身上京した。

その後、浜口庫之助の歌唱指導を受けて、ナベプロに入り、19歳になったばかりの昭和44年(1969年)11月に「ダニエル・モナール」でレコードデビューを果たす。『経験』は2枚目のシングルで、翌年の5月11日に発売された。


「経験」  安井かずみ:作詞  村井邦彦:作曲  川口真:編曲  辺見マリ:歌


<歌詞削除>

 

 

『経験』の歌い出しが「やめて!」なら、次の曲『私生活』では「とめて!」、そしてまたその次の曲『めまい』では「ちがうの!」。最初の言葉が、艶っぽいため息とともに発せられる。

中学校のお調子者の男子生徒が、よく真似をしていたのを覚えている。それは、随分と気色の悪いもので、女子生徒の罵倒の対象だった。「タアケ、バッカじゃないの!!」

辺見マリは、人気の高かった昭和47年(1972年)に同じく人気歌手の西郷輝彦と結婚する。鑑孝、えみりの二人の子どもを儲けるが、昭和56年(1981年)、夫妻は離婚をする。

えみりの4歳の時の離婚で、その後は母のマリに引き取られたため、えみりには父親の記憶がほとんどない。「歌手で、名前に『西』がつく人」と教えられていただけだったので、彼女はテレビで活躍する西城秀樹のことを自分の父だと思っていたという。

確かに、その頃は西郷輝彦は歌手というより俳優業の方に力を入れていたため、彼女には考え付かなかったかも知れない。

辺見マリは、離婚後芸能界に復帰するが、38歳頃から「拝み屋」に嵌って数億円のお金を騙し取られてしまう。その頃は娘のえみりとは絶縁状態にあったようだが、その後はマリも自分の誤りに気付き、現在は和解しているという。

平成10年(1998年)に辺見マリが久しぶりに出したシングルCD『Good-bye あばよ』のジャケット写真の撮影を、娘のえみりが担当した。

近年のマリは『夢スター歌謡祭 春組対秋組歌合戦』などの番組で、元気な姿を見せている。

 


第432回:流行り歌に寄せて No.232 「ちっちゃな恋人」~昭和45年(1970年)


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金井 和宏
(かない・かずひろ)
著者にメールを送る

1956年、長野県生まれ。74年愛知県の高校卒業後、上京。
99年4月のスコットランド旅行がきっかけとなり、同 年11月から、自由が丘でスコッチ・モルト・ウイスキーが中心の店「BAR Lismore
」を営んでいる。
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