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■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から
 

第867回:高速道路は米語で何と言うの?

更新日2024/09/19


北アメリカ大陸を東西に横切る高速道路インターステイト70号を実家に帰る時に何度も、それこそ何十回も往復しています。コロラド州の西はずれ、ユタ州まであと5マイルほどのところに住んでいる私たちは、そこから、今父が住んでいるインディペンダンスの東ブルースプリングまで約1,000マイル(1,700キロほど)全く信号のない高速道路をドライブします。しかもタダです。

少し前のことになりますが、関東に住む友人の親が亡くなり、自由に使える車があるので、札幌から東京まで高速道路で行こうとしたことがあります。日本でガソリンが高いのは知っていましたが、高速道路の料金があれほど高いとは思いませんでした。青函フェリーを含めると総額数万円にもなり、こんなに掛かるならバーゲン飛行機で行く方がズーッと安上がりだと知ったのです。


ドイツのアウトバーンもタダです。と言ってから、アメリカにも高速料金を取るところがあるのに気が付きました。典型的なのは、他にタダの高速道路があるけど、そちらの方が慢性的に混んでいるので、多少お金を払ってでもスムーズに、早く目的地に行きたい、時間通りに会社に着きたい人のため?に、従来のタダの高速道路とほぼ並行して新規の有料高速を建設しているのです。典型なのはフロリダ州を南北に走っている I-95とほぼ並行している有料高速道路フロリダ・ターンパイクでしょうか。

日本ではお金を取らないのに、アメリカではほとんど確実に料金を払わなければならいのが、橋です。
最近、橋の老朽化が問題になっています。人間と同じようにキチンと定期的にメンテナンスをしていないと、一挙に崩れるものらしく、頻繁に事故、通行止めがあります。


最近、アメリカを訪れたり、留学したり、駐在員として暮らす日本人が増えてきました。日本に帰った彼らと話をしていて、アメリカで車を買い、自分で運転した人が多いのに驚かされます。右左逆の車線を走ることなんか全く問題にしていないかのようです。

その時、高速道路のことを“フリーウエイ(Freeway)”と呼べば、アハ、彼、彼女は西海岸、ロサンジェルス、サンフランシスコ界隈か、テキサスに住んでいたな、と見当がつきます。中西部や東側では、まずフリーウエイと言わないからです。フリーウエイはもちろん信号のない、立体交差のある高速道路のことですが、いかにも自由に、タダでどこまでも走れるニュアンスがありますよね。

でも今、現在、ロス界隈だけでなく片車線5列づつある高速道路がラッシュアワーだけでなく、いつでも大変な渋滞で、とてもフリーに、自由にどこへでも行ける状態ではなくなりました。元々、建設にかかった費用を取り戻すために料金を取っていたのが、その費用をカバーし終えたので、タダにした、それでフリーウエイト呼ばれるようになったという人もいます。
 
同じ高速道路をオクラホマ、ミシガン州界隈では、“エックスプレス・ウエイ”と呼び習わしているようです。
“ハイウエイ”と呼んでいるのはアメリカ中部、カンサス付近です。
“スピードウエイ”というとなんだか、自動車レースのコース、スタジアムみたいに聞こえますが、シカゴ界隈では、普通の高速道路をスピードウエイト呼んでいました。過去形なのは、一昔40-50年前までは…という条件が付くからで、今では“ハイウエイ”と呼ぶ人が多くなったようです。

すべての高速道路を“ターンパイク”と呼んでいるのは、ニューヨーク、ヴァージニアなどの東部の州です。
他にもニューヨークでは“リヴァーサイド・ドライブ”と名付けた立派な高速道路があります。おそらくそれを真似たのでしょう、私たちの住む田舎町にも、“リヴァーサイド・パークウエイ”が町の外側を巻くように登場しました。
 
いくらアメリカが広いと言っても、高速道路の呼び名くらい統一して貰いたいものです。
そこで、街から街へ移動する時、通常、I-25を北上してとか、I-95を南下してという具合に、具体的に高速道路の名称を使うことが多くなりました。

私がよく知るカンサス・シティーでは、ハイウエイと言っても必ずしも信号のない、立体交差している高速道路を意味せず、昔馬車で走っていたような町中の道路をそのままナントカ・ハイウエイと呼んでいる道路がたくさんあり、とても定義通りハイウエイ=高速道路とは言えません。

ですから、地元の人にとってハイウエイという言葉が持つイメージが必ずしも信号なしの立体交差自動車道で、時速100キロで飛ばすことができる道路ではないのです。

もっとも、東京の首都高速、あれは信号がなくてもいつもとても混雑していて、低速でしか走れないのに高速と呼ぶのは変だと思うのですが…。

 

 

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Grace Joy
(グレース・ジョイ)
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中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。

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