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■新・汽車旅日記~令和ニッポン、いい日々旅立ち
 

第751回:北陸魅力探し - 尾小屋鉱山資料館 ポッポ汽車展示館 -

更新日2025/12/04



昭和から平成になった時はよく覚えている。私は大学3年生だった。半年くらい前から昭和天皇の病状が悪化し、世の中は自粛ブームになっていた。私は正月を東京の実家で過ごしていた。1月7日7時35分。テレビで宮内庁の記者会見が放送され、昭和天皇が6時33分に崩御されたと伝えた。後に父が言うには、FEN(米軍放送)が崩御直後に速報していたという。崩御をきっかけに争乱が起きると想定し準備していたか。あるいは父の聞き間違いだ。

天皇の崩御からすぐに新天皇の即位が行われる。イベントを自粛していた街はさらに静かになった。松本市のアパートに戻った私も暇で、テレビで皇室の様々な行事を見ていた。皇位継承を初めて見た。厳粛な行事の数々を見て、天皇の一族がずっとこの文化を維持したことに感動した。何百年も変わらない日本の作法があった。

それから30年を経て平成が終り、令和が始まる。この変化は穏やかだった。天皇が体力の低下を理由に、生前退位のお気持ちを表明された。平成から令和にかけて、国民は落ち着いたものだった。なにしろ天皇陛下はお元気で、大喪の礼もない。つまりなにも自粛する必要はない。普段と同じ生活をしながら、新しい元号が話題になった。かくして、平成30年4月30日に平成は終わり、翌日の5月1日から令和元年になった。したがって、このコラムのタイトルも「令和ニッポン、いい日旅立ち」となる。

令和の最初の旅は観光列車の「花嫁のれん」だった。2019(令和元)年5月20日。私は取材チームと別れて、敦賀経由長浜行きのきっぷを買った。金沢駅15時01分発の北陸本線の各駅停車に乗り、小松駅で途中下車し、レンタカーを借りた。私ひとりと荷物だけだから、最も安いランクの軽自動車にした。カーナビゲーションが指し示すまま、市街地を通り抜けて山道に入り、約20分で尾小屋鉱山資料館に到着した。見学者は私のほかに老夫婦だけだ。それも私と入れ違うように去って行く。駐車場に私が借りたレンタカーがポツンと佇んでいる。

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尾小屋鉱山資料館

尾小屋鉱山は小松市街地の南東にあり、江戸時代に金山として採掘された。しかし産出量が少なく閉山になる。明治時代に銅が発見され、こちらは埋蔵量も採掘量も多く、日本有数の銅鉱山になった。大正時代に北陸本線の小松駅と鉱山を結ぶ軽便鉄道が開通し、鉱山はますます賑わった。そして私の関心は軽便鉄道の尾小屋鉄道にある。

北陸新幹線の金沢~敦賀間の開業が近づいて、沿線地域は関東からの観光客に期待している。そこで、高速バスツアーの会社から「鉄道をキーワードに観光ルートを提案できないか」と相談された。会社の事業として、日本海沿岸地域の観光を支援したいという。それならば現地に行ってみようと思った。正式依頼の前の自費視察である。

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尾小屋鉄道コーナー

尾小屋鉱山資料館は小さな建物だった。しかしその歴史や当時の道具などの展示物が多い。元々あった建物を残して、見せたいモノを詰め込んだようだ。その一角に尾小屋鉄道の資料もある。歴史紹介パネル、転轍機、職員の衣裳、きっぷ、沿線図、そして、新小松駅のジオラマがある。車両は動かないけれど、線路配置はしっかり再現されているようだ。北陸本線と線路がつながっていないけれど、おそらく模型の範囲外でつながっているはずだ。重い鉱物を積み替えるなんて手間だから、きっと貨車ごと直通していたのではないか。

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新尾小屋駅のジオラマ

展示館の裏に自由の広場という散歩道がある。ツツジの生け垣からピンク色の花が顔を出している。その先に坑道を残した「尾小屋マインロード」があって、人形で採掘の様子を再現している。入り口から出口まで、ゆっくりまわって20分ほど。トロッコ軌道もあり、かなり見応えのある施設だった。展示館よりこちらが展示の中心かもしれない。

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体験坑道 「尾小屋マインロード」

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坑内トロッコも展示されていた

資料館を出て、クルマを置いたまま、なだらかな坂道を降りていくと「ポッポ汽車展示館」がある。小さなC型タンク式蒸気機関車と、キハ3というディーゼルカーと、ハフ1型客車が屋根の下に鎮座している。静態保存のように見えて、実はキハ3だけが動態保存である。線路が展示館から少し延びていて、当時の乗り心地の悪さを体験できるという。鉱山内に保管されているバッテリー電車も持ち込んで、場内を一周する。スケジュール表を見ると年に5回。そして最後に「キハ3の体験乗車は2022年で終了」とある。

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ポッポ展示館 真ん中がキハ3

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蒸気機関車 No.5

「尾小屋鉄道開業百年 キハ3をなかよし鉄道で走らせよう!」というポスターがある。なかよし鉄道は北陸本線粟津駅の近くにある「いしかわ子ども交流センター小松館」に設置された線路で、こちらにも尾小屋鉄道の車両が動態保存され、全長473メートルの線路があるという。「キハ3をなかよし鉄道で走らせよう!」の費用をクラウドファンディングで募集していたことは知っていた。しかし私は廃線より現役路線を優先しているから、なかよし鉄道を気に留めなかった。近くだから見ていきたいけれど、もう閉館時間を過ぎている。北陸新幹線が延伸したら行こう。

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周囲を散歩してみる。凝ったデザインの石橋がある

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六角形の石垣も珍しい

…つづく

 


杉山 淳一
(すぎやま・じゅんいち)
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1967年生まれ。東京出身。東急電鉄沿線在住。1996年よりフリーライターとしてIT、PCゲーム、Eスポーツ方面で活動。現在はほぼ鉄道専門。Webメディア連載「鉄道ニュース週報(マイナビ)」「週刊鉄道経済(ITmedia)」「この鉄道がすごい(文春オンライン)」「月刊乗り鉄話題(ねとらぼ)」などWebメディアに多数執筆。

<<杉山淳一の著書>>

■連載完了コラム
感性工学的テキスト商品学
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デジタル時事放談
~コンピュータ社会の理想と現実
 
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■鉄道ニュース(レポーター)
マイナビニュース
ライフ>> 「鉄道」
発行:マイナビ 

■著書
『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法: 時刻表からは読めない多種多彩な運行ドラマ!』

列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法
杉山淳一 著


『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。』 ~日本全国列車旅、達人のとっておき33選~』
ぼくは乗り鉄、おでかけ日和
杉山淳一 著

『みんなのA列車で行こうPC 公式ガイドブック (LOGiN BOOKS)』
みんなのA列車で行こうPC 公式ガイドブック
杉山淳一 著


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