第96回:オバマ祭りの終わり
更新日2009/01/29
就任演説でオバマ大統領は、「ほんの60年前にレストランで食事ができなかった父を持つ男が貴方の前にいる」と、自分の黒人の父親を引き合いに出し、歴史的瞬間を詠いあげました。
彼の演説は誰からも賞賛され、就任式は190万人もの人をワシントンに集め、彼らを感動の波に包み、大成功に終わりました。ちなみに彼の演説は20分ほどでした。
歴代の大統領就任演説でギネスブック的最長演説をした大統領は9代大統領のウイリアム・ハリソンです。彼は冬のワシントンの寒空にめげず、上着を脱ぎ捨て、なんと1時間40分も熱弁を振るいました。
それが原因でハリソン大統領はもう一つ、ギネスブックに載るような記録を残してしまいました。寒空での演説が元で肺炎になり、1ヶ月程で死んでしまったのです。ハリソンは最も長い就任演説演説をし、大統領就任期間が最も短い大統領になったのです。演説が長すぎるのは常に考え物です。
就任演説は一つの大きな政治的なショーですから、大統領はアメリカの国民の前で自分をアピールする絶好のチャンスを存分に生かさなければなりません。就任演説で言ったことと、その後で彼が実際に行う行政が必ずしも一致しようがしまいが、就任演説の良し悪しは大統領としての評価にはあまり影響がないと極言してもいいでしょう。
たとえば、ルーズベルト(ルーズベルトは二人いますがFranklin D. Rooseveltの方です。在位1933年から1945年)は、「アメリカ人の若者の血を一滴たりとも海外で流させない」と公言して大統領になりましたが、その後、ヨーロッパ、アジアの両面にアメリカ史上最大の軍隊を送り込み、一滴どころか五大湖が真っ赤に染まるくらいアメリカの若者の血を流しました。
それだからと言って、ルーズベルトの評価が下がることもありませんでしたし、彼を嘘つき呼ばわりするアメリカ人も出ませんでした。ルーズベルトが歴代の大統領の中で常に最高の評価を受けていることに変わりはありません。
大きな感動を持ってことにあたるのは素晴らしいとこなのです。しかし、こと政治に関しては感情に走りすぎることは危険を伴います。ヒットラーも最初はドイツ国民の圧倒的な支持を受けて、民主的な選挙で首相になったのです。
私自身、オバマが大統領になって良かったと思っていますし、これから彼が直面する厳しい現実に同情しながらも、彼なら今アメリカを覆っている大きな重い雲を追い払い、少しでも光が射すような状況に持っていってくれるのではないかと期待しています。
それと同時に歴代、最も無能な大統領と位置づけされるであろうブッシュを二期、8年間も大統領に置いた罪は、私たちアメリカ人にあると思っています。
オバマ大統領が天性の魅力を備えた一流の演説家であり、優れた討論家であることは長い選挙戦で立証済みです。彼の就任演説に何万、何十万というアメリカ人は涙を流しました。
しかし、お祭りが終わった今、オバマ大統領が自らのカリスマ性を廃し、これから如何に実務をこなして行くかだけが、本当の評価につながると思っています。
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