第195回:カレンダーと不思議な記念日
毎年のことですが、年末、年始になると日本からいくつか新年のカレンダーが届きます。大きな大相撲のカレンダーは、私の事務所の一番目に付く壁に張り、小さめの日本的な写真が付いたカレンダーはコンピュータの上、難しい格言箴言が書いてある日めくりは生徒さんやアシスタントが使う机の前に貼ります。もっとも、この格言、箴言は難しすぎて、ウチの仙人でも、ウーム、どういう意味かなーと、判明できないものもあります。
日本のカレンダーですから、もちろん日本の祭日は赤い文字で書かれ、ほかに小さな文字で、いまだに仏滅、友引、先勝、赤口、大安など、結婚式の日を決める以外に役に立ちそうもないことが書かれていたりします。お月さんの状態が書いてあるのは、山の生活に役立ちます。
スペイン、プエルトリコに住んでいたとき、カソリックの聖人にちなんだ休日が多いのに驚きました。その点、日本には宗教的な祭日(建国記念日は少し日本教的な要素がありますが)がなく、実にユニークな祭日が多いようです。
成人の日? これ昔の元服と関係あるのかしら。秋分・春分の日が休日なのも変わっていますが、そうなるとどうして夏至や冬至は休みにならないのと訊きたくなります。
4月29日は「昭和の日」になりました。これは世界中の君主の誕生日がおおむね休日になっていますから珍しいことではありません。アメリカでは歴代の大統領の誕生日をぜんぶ休日にするわけにもいきませんし、誰かの誕生日だけを祭日にすると、必ずどうしてあいつの誕生日が祭日で、あいつよりズーッと偉い俺の誕生日が休日にならないのだ、とごねる元大統領がでてくるので、まとめて「大統領の日」として、リンカーンとワシントンの誕生日の間、2月の第三月曜日を祭日にしています。
心置きなく連休を取るための方便でしょうか、5月4日を「緑の日」としたのは、日本のお役人の苦肉の策とはいえ、まとめてバカンスの休暇を取る習慣のない、働き蜂の日本のサラリーマンが国家公認で堂々と一週間くらい休めるようにしたのですから、素晴らしいヒット策だと思います。しかも、誰が付けたのかゴールデンウイークとはヨクゾ名付けたものです。
「海の日」があって、「山の日」がないのも不思議です。「子供の日」というのも変わっていますが、それに対応して「敬老の日」があるのも愉快です。
さて、日本で11月22日は何の日かお分かりでしょうか。祭日ではありませんが、「夫婦の日」なのです。ただの語呂合わせ22をフウフと読ませたことから来ているのでしょうけど、まだ祭日にはなっていないようです。でも、一体どうやってこの日を祝うのでしょうか。それは個々の夫婦の問題ですね。アメリカなら、この日には離婚できないことになるのでしょうか。
日本には、面白い「記念日」がたくさんありますが、アメリカにあって日本にない「記念日(週間)」は「養子縁組週間」でしょう。11月の7日から14日までです。アメリカでは、日本に比べはるかに多くの海外の赤ちゃん、子供を養子として受け入れています。貧しく、満足に食べ物のない国の子供たち、戦争で両親を失った子供たちを、結婚したばかりの若い夫婦から、自分の子育てが終わり、まだエネルギーと財力にゆとりのある中年夫婦までが養子として受け入れています。
私の従妹もロシアから養子を二人貰って育てています。義理の姉の両親も自分の子供に手がかからなくなったときにもう一人養女を貰い育てました。話を親戚に限らなければ、周りにそんな例が多すぎて、いちいち数え上げることができないほどです。
里親は初めから、子供たちに、お前は養子、養女であること、しかし自分の子供と同じように、もしくはそれ以上に愛しているし、かけがえのない存在であることをはっきりと伝えるケースがほとんどで、出生の秘密を隠すようなことはしていません。
養子縁組週間で、この小さな町だけでも45組もの縁組が成立したとニュースにありました。
キリスト教関連のクリスマス、イースター以外で、すっかり定着して大きな祭日になったのは「サンクスギビング」でしょう。アメリカ大陸に上陸した清教徒たちが、原住民インディアンに助けられながら、一年の収穫を終え、インディアンを招いてご馳走パーティーを開いたのが始まりと言われています。もちろん、そんなことがあったことを疑う人はたくさんいますが…。
このサンクスギビングは七面鳥にとっては厄日です。アメリカ全土で何百万羽という七面鳥が丸焼きにされます。付け合せはかぼちゃのパイと決っています。そして、いつの頃からでしょうか、アメリカンフットボールが割り込んできて、大きな試合が全国ネットで放映され、テレビのチャンネルはどこを回してもフットボールだらけの日になってしまいました。サンクスギビングは、タラフク食べてフットボールを見る日になってしまったのです。
それが11月第4木曜日ですから、サンクスギビングが終わると、もうクリスマスまでもう一息です。
第196回:日本の大学と国際化
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