第146回:私の蘇格蘭紀行(7)
更新日2009/07/09
■エディンバラ城、ウイスキー資料館と念願の"パブ"デビュー
4月3日(土) 、エディンバラに来て3日目を迎えた。「訪蘇」前から髪が伸びすぎていたのが気になったので、早速9時きっかりに昨日覗いた床屋さん(正確には、理容美容店だろうか)に入る。
ほとんど英語が話せないので、昨日応対してくれた、例の若く太った店員さんにおまかせで頭を刈ってもらう。日本で切ってもらう時よりかなり短くなって、ひげが際立ってきたので、香港映画の小悪党のような顔立ちになってしまった。そう、ジャッキー・チェンに最初につっかかって行って、あっという間に倒されてしまうような。
それでも、何度か店員の彼女に"You looks better"などと言われて、まあこれも悪くないな、などと思ってしまう。単純なものだ。何より値段が心配だったが、£6.00、とても安心した。日本よりもかなり安い。
表に出てから気付いてのだが、一件挟んで隣も理容美容店、ここは表に"GENT WET CUT £5"と書いた紙が貼ってあった! あのおねえさんとは二日続きのお付き合いだったし、まあよしとしよう。
昨日のマレイフィールド・ラグビー場ヘ再び。昨日はバスでウトウトしていたので混乱していたが、ラグビー場に行くには、昨日降りたバス停よりも三つ程手前で降りれば良かった。ここだと南門まで10分足らずで着く。知らないとは言え、ずいぶん遠回りをしていた。
ショップが開いていたので、会社時代大変お世話になったラグビー好きの方のためにスコットランドのナショナルカラーで、チームのロゴの入った濃紺のネクタイを購入した。この方には、私は在職中に銀座でネクタイを買っていただいていたのだ。
自分のためにはウイスキー入れ、いわゆるフラスコを買った。表面にナショナルチームのアザミのマーク、そしてその下に"SCOTTISH
RUGBY UNION"と書かれたものである。これは、日本で私が購入していたスコットランドのラグビー・ジャージのレプリカの胸に着いているロゴとまったく同じもので、とてもとても気に入ってしまった。
バスで街中に戻り、せっかくだからとエディンバラ城の中に入る。入場料£6.50は私にとっては高かった(床屋代より高い)が、歴史的建造物を見るのにあまり吝嗇振りを示してばかりではいけないだろう。
歴史上のいろいろなものが陳列されていたが、興味を引いたのは、第一次及び第二次世界大戦でのScottishの戦没者の名簿が置かれた建物だった。西洋全体の文化だろうが、戦争による被害者には実に手厚い姿勢で接しているのが伝わってくる。
私は正直、観光というのが好きではない。歴史ある建物をゆっくり回るという感性を、あまり持ち合わせていないのだろう。城内では何人かの日本人観光客に会い、久し振りに日本語の会話を聞いたが、彼らは熱心にいろいろな資料に見入っている人たちばかりだった。
そのうちに彼らに集合がかかり、みな残念そうにその場を後にした。何日かのイギリス旅行の一環としてこのお城を訪問したのだろう。時間があり余っている私があまり興味を示さず、時間のない方々が未練を残して次に行くというのは皮肉で、とても申し訳ない気がした。
エディンバラ城に程近いスコッチウイスキーの資料館"The Scotch Whisky Heritage
Centre"に入る。ウイスキーの作り方、モルトとグレーンの違い、歴史などについて、ディズニーランドのアトラクションのような乗り物に乗って館内を回った。
日本語による解説の回もあったが、少し時間がかかりそうなので英語の解説で回ったが、わかりやすい英語で助かった。最後に一杯何とかというモルトウイスキーを飲ませてもらった。私は数少ない、自分の知っている銘柄の中からダルモアを追加で注文した。
資料館から少し離れたところにパブが多く建ち並ぶ"Rose Street"という通りがあり、私はその中の一軒のパブに入った。生まれて初めて入った、スコットランドのパブの店名は"ROSE
STREET BREWERY"だった。
金髪の22、3歳と思われる女性に"A pint of beer please!"とお願いすると、薄い褐色のビールが出てきた。名前を尋ねると"Brewery
Bitter"とのこと。確か「地球の歩き方」にこの店で作られていると書いてあった。苦みが心地よく旨かった。
店内には、いわゆる老若男女のお客さんたちがそれぞれの時間を楽しんでいるようだったが、みな一様にパイントだかハーフ・パイントのグラスを持っているだけで、何かを食べている人は一人も見かけなかった。
こちらの人たちは、飲み出すと本当に食べないのだ。しかも1、2杯のビールを実にチビチビと、いろいろな話をしながら飲んでいる。1pintが£2.10と安く、2杯飲んでも千円いかないのは、貧乏旅行をしている私にはたいへん助かる。食費を切り詰めてでも、毎日パブには来ようと心に決めた。
店内に流れているのは、日本でもよく耳にしたポピュラー音楽、テレビはスポーツ中継を流し、店の隅には、なぜか大きく"COMPUTER"と書かれたスロットマシーンが置かれていた。
お腹が空いたので、帰りに夕食用のトマト・チーズ・ピザを買う。£3.00と手軽な価格ながら10インチとかなり大きい。日本に比べてかなり安いと思う(貧乏旅行ゆえ、価格のことばかり並べ恐縮だが)。B&Bに帰って食べたが、味も良かった。
-…つづく
第147回:私の蘇格蘭紀行(8)