第440回:NHKとオレオレ詐欺
私たちがハイキングや山登り、山スキーに出かけるのは、当然のことですが、土日とか祭日になります。秋から冬にかけてのアウトドア活動に出かけて、奇妙なことに気がつきました。
これはウチのダンナさんが指摘し、注意してみると、本当にその通りだったのですが、アウトドア活動で女性が70~80パーセントを占めているのです。若い女性からお年寄りまで、圧倒的に女性軍優勢なのです。
これは秋にはアメリカンフットボールの試合が始まり、おまけに野球の大詰め、そしてワールドシリーズがありますから、男どもはビールを飲みながら、テレビにかじりついているのでしょう。フットボール、野球未亡人となった女性は、うるさいスポーツの実況中継(どうしてスポーツのアナウサーはああまで叫ぶのでしょう?)を逃れ、アウトドアに奔る図式になってしまいます。皆月極めの受信料を払って、ケーブルかサテライトでスポーツの実況を観ているのでしょう。
私たちが棲む山まではテレビの地上電波が届きませんから、テレビはレンタルのビデオやDVDを見るためだけに使っています。ところが先週、シアトルに住む妹夫婦の家に行って驚きました。どのような仕掛けになっているのか、世界中のすべてとは言いませんが、ヨーロッパ諸国、日本、韓国、中国などのテレビまで見ることができるのです。妹の旦那さんはハイテック関係の人ですから、そのように受信できるシステムを持ち、プロバイダーと契約して、受信料を払っているのでしょう。ともかく、800チャンネルという想像外の番組を見ることができるのです。
ハイテック音痴の私から見れば、まるで未来、スペースエイジのことのようでした。料金が高い有線テレビやサテライトテレビを見る、見ないは、サービス会社と個人の契約の上に成り立っています。見なければ払わない自由があります。
ところが、NHK受信料は奇妙な方式です。受信料といえば、昨年、日本で私たちが借りていた公団アパートにNHKの集金人がやってきました。ダンナさん、払いませんよ、契約書なども受け取りません、一切サインもしないし、印鑑も押しませんよ、お引取りください…と追い返していました。
外国人にとって、日本での奇妙なこと、マカ不思議なことは沢山ありますが、NHKの受信料は日本人がお上に弱く、お上の言うことに従う性向をよく示した例でしょう。電波を送っているから受信機を持っている人は、月々相当な受信料を払わなければならない…という理屈を鵜呑み、もしくは理解し素直に払う外国人、とりわけ西欧人はいないでしょう。たとえば、日本国内で基地の外に住むアメリカ人家族は相当数に上りますが、誰もNHK受信料など払っていないことでしょう。
イギリスのBBC、アメリカのPBSでも、受信料など一銭も取っていません。もし、国が公的放送を必要とするなら、税金でまかなうべきスジのものなのです。実際には、BBCもPBSも台所は火の車で、チャリティーを大きな企業や個人から募っています。でも、それは義務というようなものではありません。
NHK受信料を法律で義務化しようとしていますが、NHK経営委員会会長の浜田健一郎さんでさえ、「国民に理解されない型で、法案を通すのは難しい」と言っていますし、千葉県松戸市の男性がNHKに18万円の受信料滞納で訴えられましたが、簡易裁判所の江上裁判官はNHKの訴えを棄却しています。
オレオレ詐欺に引っかかり易い県、地域、引っかかり難い地方はずいぶんはっきりしています。NHK受信料も日本全国平均で75.6%の世帯がきちんと払っている(この数字も驚きです)ようですが、一番払わない県は沖縄で44.3%です。これにはいつも沖縄が日本の犠牲、ツケを払わせられている立場だということもあるでしょう。次に低いのが大阪で59.7%ですが、さもありなん、さすが大阪人、理屈の通らないお金は1円でも払わない精神を反映しているように見えます。
素直にハイハイと受信料を払っている県は、秋田県がトップで97%、90%以上の県は島根、鳥取、山形と農村地帯の県です。これは、オレオレ詐欺に引っかかり易い地域と見事に一致しています。また、大阪はオレオレ詐欺の最も少ない、引っかからない県のようです。
理由のないお金を取るという観点では、どうにも、NHK受信料はオレオレ詐欺の国家版と言えそうです。
第441回:生き物としての言語~変化する日本語
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