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■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から

第722回:オリンピック新種目を提案します

更新日2021/08/26


よほどオリンピックのサッカーが観たかったのでしょう、ダンナさん、屋根に上り、前時代的なテレビのアンテナをアッチコッチに向け、今までなんとなく開けた谷の方に向けていたのを、全く逆の北東の岩山に向けたところ、奇跡的にスペイン語(メキシコ語)の放送が入ってきたのです。映りは非常に悪く、映像だけでなく音声も途切れます。大昔、人類初めてアームストロングが月の表面に立った時の実況中継の方がマシだったと思います。

それにしても、ウチのダンナさん、東京オリンピックに大反対していたはずなのに、いざオリンピックが始まると映りの悪い画面に見入っているのはどういうわけでしょう。オリンピックを強行開催した政治家たち、そのあたりの大衆の心理というのか、一旦ゲームを始めれば、日本人だけでなく、世界中の人たちがテレビ中継にかじり付くと先読みしていたのでしょうね。

次の大会はパリだそうですね。IOC(国際オリンピック委員会)は益々お金持ちスポーツクラブの集会になり、発展途上国でオリンピックが開催される可能性がなくなりました。私に一つ良いアイディアがあります。メダル獲得競争が国威を発揮するモトになっているのですから、次のオリンピック開催国への援助資金を前の大会のメダル獲得数に比例して割り当てるのです。

常にメダルをたくさん取っているアメリカ、ロシア、中国などが、オリンピック村、競技施設などを、その割り当てに基づいて建ててあげるのです。そうすれば、発展途上国で開催される可能性が出てくるでしょう。どの道、そんな援助金額は、西欧の国々、日本、中国、アラブの産油国にとってわずかな出費でしょうし、それらの国が国威発揚のため、武器、戦艦、戦闘機、戦車などに使っている額に比べたら微々たるものでしょう。オマケに、すべての競技が観客なしでも行えることを今回証明したのですから、巨大なスタジアムなど必要なく、純粋にその競技をするスポーツ選手のための競技場を建てればいいのですから、それほどお金がかかりません。

それに、天文学的なテレビの放映権があります。そのお金は現在、IOCの懐に入る(一旦入れる)ことになっています。IOCの役員が飛行機はファーストクラス、ホテルは5つ星、現地の移動も通訳付きリムジンという悪習を改め、彼らも選手村に泊まって貰うのです。そして、委員すべてをいきなりボランティア…というのが無理なら、給与は開催国の下級役人と同じレベルに下げ、IOCの莫大な収入を貧しい国のスポーツ振興に振り分けてはどうでしょうか。

IOCバッハ会長さんのホテル一泊最高は300万円、平均しても100万円以上だというのですから、一体全体、どんなホテルのどんな部屋に泊まっているのでしょうね。

オリンピックのアマチュアリズムが崩れてから久しく、クーベルタン男爵が今のオリンピックを観たら、“こりゃ、 俺の意図したスポーツの祭典ではない”と目をムキ、腰を抜かすことでしょう。彼は古代ギリシャ・オリンピックの復活を目指していたのですから…。


競技種目にも問題が大アリです。今回の東京オリンピックにスケートボード、フリークライミング(本当の岩ではなく、実際は人工の壁登りですが)、マウンテンバイク、サーフィンなどが加わりました。若者、子供の遊びがスポーツの祭典の公式種目になったのです。元々メダルの一個の重さなど比較できるものではありませんが、苦しく長いトレーニングを積み重ねてきて、やっとオリンピックの出場権を獲得し、全世界から選び抜かれた相手選手と競争するような種目、例えばマラソンと遊びの延長のようなスケートボード、サーフィンととても同列にできないと思うのです。

偉そうな審査員が採点して順位を決める競技は、0.0何秒を競う競技と一緒にできない筋合いのものでしょう。私自身、遊びの延長線にあるスポーツ的なオアソビは大好きなのですが、競技として順位を争うのは不自然ですし、本来の遊びの精神がなくなってしまうように思います。

柔道、レスリング、ボクシングが重量別に分かれているように、他のスポーツも小さい人、軽い人のクラス分けを設けなければ、生まれつきの巨人、ゴリアテに小人が適うわけがありません。例えば、バスケットでも、身長で大、中、小、の三つくらいにクラス分けをしなければ、チビチームの技がいくら優れていて2Mクラスを揃えたチームに勝てるわけがありません。バレーボールも3階級くらいに分けるべきです。

また、走り高跳びも、選手の身長より何センチ上まわったかで、争うべきでしょう。ハードルを観ていた、短足系のダンナさん、「あいつらカモシカか? 足の長さで階級を設けるべきだ」とか言っていますが、まさか股下何センチクラスなどと、分けられませんよね…。

新種目ですが、絶対に面白いのは綱引きでしょう。男女別でもいいし、混合ミックスのチームでも良いでしょう。おまけにプロなどいませんから、純粋なアマチュア精神に則った選手ばかりが集まり、観る方も手に汗握る熱戦になること間違いなしです。道具も丈夫な綱があればよく、お金のかかる競技施設もいりません。

日本で盛んな駅伝はどうでしょうか。チームを組んだマラソンですが、距離を箱根駅伝かそれ以上に伸ばし、3、4日の競技にするのです。

ダンスも加えるべきでしょう。ボールルームダンスは世界選手権もあり、評価が安定していますから、今までオリンピック種目ならなかったのが不思議なくらいです。加えて、ディスコダンス、ブレイクダンス、ヒップホップ、ラップも観る者を楽しませます。

集団のダンス、踊りのキワミである、よさこいソーランは、もうすでに海外からの出場グループも相当数になっていますから、オリンピック種目まで後、一押し…ではなく二押し、三押しくらいのところまで来ているのかもしれませんよ。これぞ、参加することに意義がある、オリンピック精神に則た競技です。

ローラースケート、ローラーブレイドの競技が全くないのも奇妙です。アイススケートのようにスピードを争うことも、シングルでもペアでもダンスができるのですが…。私自身、若かりし頃、長い髪をひるがえしながら、ボーイフレンドと乗り、滑りまくったものです。今は昔のことですが…。

ほとんどすべての競技に女性が進出しており、ボクシングにも女性のクラスがあるのに、呼び名が変わったアーティスティックスイミング(旧:シンクロナイズドスイミング)、新体操に男性のクラスがないのは片手落ちというものです。ぜひ男シンクロを! 毛だらけの男の足、脚など見たくないという人は見なければいいのです。逞しい毛だらけの脛を美しい、素晴らしいと感じる人たちがホモ、ゲイでなくても必ずいるはずです。 

子供の頃、誰でもやった…と思うのですが、ドッジボールも楽しい競技だと思います。あとは、オランダの運河でやっているような“棒幅跳び”、バスク地方でお祭りにやっているような、丸太や丸い石を運ぶ短距離レース、水に潜った深さではなく、何メートル進めるかを競う“潜り距離”などなど、私の大好きな“相撲”も是非…と言いたいところですが、少し日本とモンゴルに偏りすぎているでしょうか。


-…つづく 

 

 

第723回:アメリカ敗戦録

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Grace Joy
(グレース・ジョイ)
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中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。

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