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■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から
 

第919回:増加している自閉症(Autism)

更新日2025/10/02 

 

オレゴン州に住む私の兄夫妻の息子の子は自閉症です。現在高校1年生で、普通高校に通い、皆と同じ授業を三つ、あとは特別学級のクラスを取っています。彼、自意識を持ち始め、自分が障害者だと意識し始めた2年ほど前から、極端に閉じ籠るようになり、私たちが会いに行っても、ウンでもスンでもなく、一人離れて、あるいは別の部屋に行き、ビデオゲームばかりしています。身体は同年齢の子に比べてとても大きく、このままいけば超デブになるのは確実です。

12、13歳までは、それほどの引き籠りでもなく、一緒に散歩したり、食卓を囲んでいたのですが…。そして、車や機械類に対する興味と集中力はずば抜けていて、私の妹が彼にフェラーリの組み立ておもちゃをプレゼントした時、それを組み立てるのに2時間、いや3時間くらいでしょうか、まさに一心不乱、汗びっしょりかいて、食べるのも忘れ(彼、食べ物に猛烈に固執し、特に甘いモノは留まるところがありませんでしたが…)集中していました。

もう一人、私の従兄も自閉症ですが、彼は異常な記憶力を、自分が興味を持つことだけに限ってですが発揮し、例えばロック、ポップの分野で1972年5月のヒットチャート、ビルボードのトップスリーなどが即答できるのです。彼のそんな能力を活かして、今、懐メロ専門、70、80年代のインターネットラジオ放送を立ち上げて配信しています。

でも、これは趣味の延長で、それで生活ができるというものではありません。普段はテレマーケティングの会社で、クレームを受ける仕事をしています。およそ、最低賃金に近い時給で働いています。いずれにせよ、彼個人で独立した生活をしています。

さらにもう一人、同僚の教授の娘さんも自閉症です。彼、私の同僚は、文学創作の先生で、彼自身、何冊かの本を出版しています。娘さんももう20歳をとうに過ぎていますが、地元の雑誌、新聞に寄稿するようになり、とても自立とまでは行きませんが、自分の道を歩み始めたようです。

自閉症の子や人は天才的なモノを持っていることが多いのですが、誰かが彼らの特殊な才能を見抜き、指導しなければ、宝の持ち腐れになってしまうようです。甥っ子の子供も、どこか自動車関連のトレーニングセンターみたいなところで、自閉症の子供を受け入れ、対自閉症の教育訓練を受けた指導者がいれば、非常に優れた修理工になるのでは…と思っています。それはマンツーマンの仕事になるでしょうから、自閉症の子供、各個人に合った教育をするのはとんでもなく大変な仕事になるでしょう。

周囲に自閉症の人が多くなったような気がします。私が教職にあった時にも、幾人かそんな学生さんがいました。現在、アメリカで男女平均31人に1人の割合で自閉症の人がいます(男性が女性の4倍です)。人種別に見ると、コーカソイド(白人)に最も少なく、黒人、アメリカ原住民のインディアン、ヒスパニック(スペイン語を話す移民)に多い傾向があります。

これは人種というより、経済状態が良く、裕福に育ったか、ド貧乏だったかによるのでしょう。自閉症は早い時期ですと2歳頃から、顕著な症状が現れるのは5歳前後と言われていますから、富裕層は子供の異変を感じ取るとすぐに精神科医、心理コンサルタントに行くことができますから、その差が裕福な白人、貧乏な有色人種の違いになって現れ、別に自閉症と人種は関係がないように思います。

他の統計によると、毎年、女の子で70万人、男の子で111万人の割合で増加していると言われています。

どうしてこのように自閉症が急増しているのか、ハッキリとした原因は分かっていません。ある学者は砂糖分の摂り過ぎ、幼児の時から接種する様々なワクチンの影響だ、社会学者は家族制が崩れ、インターネット時代に入り、子供が一人でパソコンゲームに埋没し、社会性をなくしてしまう、そのような原因ではないかと言っています。

自閉症と言っても幅が広く、一つの症状で括ることはできません。

私の生徒さんたちの場合、彼ら、彼女らは、宿題はキチッとやってくる、全集中力で授業を受け、私の言葉を一言も聞き逃すまいと食い入るように聞いています。だた、グループで何かプロジェクトをするのに、全く向いていません。他の生徒さんも、誰も、彼を彼女を誘いません。
 
少し古い統計になりますが(2018-2019年)、高校を卒業できた自閉症の子は74%に及び、普通の子は86%ですから大差はありません。ところが、こと就職になると、自閉症など他の精神障害を含めて21%しか就職できていないのです。

もう一つ、幼年、少年時代にはイジメの問題があります。学校では決してイジメなどしないように口を酸っぱくして普通の生徒に指導していますが、自閉症の子どもは、ことあるごとに自分が他の子供たちと違う現実を見せられますから、具体的なイジメがなくても、疎外感を持ち、自分で自分を傷つける、ひいては自殺にまで及ぶことがママあります。逆に、自閉症の子供に対して腫物に触るように接すると、その子の我がままを増長することになります。

音楽、何かの楽器、ピアノ、ギター、管楽器などを練習させるのが、深い自閉症に陥るのを和らげると言われています。天才的な演奏家の幾人かは自閉症なのだそうです。でも、これは適切な指導者に就かなければなりません。

自閉症の子供への取り組みで、ユニークなのはマーシャル・アーツ(空手、柔道、合気道などの武道)を習わせるという動きがあります。確かにそのような武道は、自己制御と相手を尊敬する態度が基本ですから、同時に汗びっしょりになるくらいの運動量ですから、自閉症の人でなくとも、身体と精神に良いのは確かでしょう。その子がマーシャル・アーツの道場に通っている…というだけで、イジメに遭うチャンスが減るというのです。

なんか、本来のマーシャル・アーツの持つ意味とは違うような気もしますが、自閉症の子供をいきなりチームプレーのスポーツ、アメリカンフットボール、バスケットボール、バレーボールなどに入れるのは無理があるので、まずは個人プレーの武道で身体と精神、そして感情をコントロールするのは案外良い方法かもしれません。

私も、甥っ子の息子に音楽かマーシャル・アーツを勧めてみようかと思っています。
その子、このまま行けば、お相撲さんになれそうな超重量級になってしまいそうですから…

-…つづく

 

 

第920回:メタと呼ばれる麻薬

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Grace Joy
(グレース・ジョイ)
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中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えていました。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。

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