第792回:アメリカの国家的祭日、“スーパーボールの日”!
2月12日は何の日でしょうか? アメリカで一番大きな行事、アメフトの最終戦、スーパーボールが行われる日なのです。それはもう、お祭り大好きなアメリカ人の極地を行く馬鹿騒ぎで、その2週間前から、勝ち残り、顔を合わせる両方のチームの分析に始まり、その日の天候がどんな影響を及ぼすか、フィールドの芝の状態はどちらに有利か、などなど話題がつきません。もちろん、個々の選手の体調からゴシップじみた私生活まで網羅されています。
スパーマーケットの入り口近く、一番目立つところはスーパーボールコーナーになり、両チームのロゴの入ったユニフォーム、帽子、ジャケット、マフラー、ビールのジョッキー、フラッグ、ありとあらゆる関連商品が並びます。ちなみに、半袖のTシャツが35ドル、選手の名前と背番号が入ったジャケットは150ドル、ヘルメットは849ドルもします。もちろん、インターネットでも“正規の?”ユニフォームを買うことができます。
ニューヨークタイムズが、「スーパーボール・サンデーはアメリカの国を挙げての祭日だ」と皮肉ったほど、アメフトの話題に終始します。今年はフィラデルフィアの『イーグルス』と私が生まれ育った街、カンサスシティーの『チーフス』の間で争われました。
今、滞在しているスキー場近くの谷間の町でさえ、その時間になるとピタリと交通が途絶え、静まり返りました。裏庭で友達、親戚を集めてのバーベキューパーティーをし、ビール、ワイン、ウイスキーで盛り上げ、それから大画面のテレビの前に陣取り、観戦するのが正当な常道です。“スーパーボール・パーティー”という言葉が定着しています。
このスーパーボールは何もかもケタ外れで、まず入場料の平均が5,000ドルで、お高い席になると1万ドルを軽く超えます。そんな大金を払っても切符が手に入らないので、ダフ屋が暗躍します。最近、特にインターネットでのチケットの販売ができるようになり、その上オークションが登場し、ますます高値を呼ぶようになってきました。ゴシップ的なニュースソースでは、最高は2万5,000ドル払った人がいるとか、いないとか言っています。
そして、視聴率です。これも報道機関によって開きがありますが、1億4,900万人のアメリカ人がテレビに釘付けになったとしています。ということは、赤ちゃん、子供を含めたアメリカ人の半数以上がスーパーボールを観戦したことになります。もっとも、少なく見積もる(US Today)では、1億1,300万人だと推定しています。それにしても、大変な数のアメリカ人がテレビに釘付けになっていることになります。これはオリンピックの開会式や、サッカーのW杯、NBAバスケットボールのファイナル、野球のワールドシリーズなんか比較にもなりません。
それだけ大勢のアメリカ人がテレビに齧りつくのですから、コマーシャルの効果は絶大なのでしょう、30秒のコマーシャルが6ミリヨンドル(8億円以上になるのかしら)で、それに加えて、コマーシャルの製作費が10から15ミリヨンドルかかりますから、まさに天文学的な数値のお金を30秒に注ぎ込むことになります。アメフトファンの中には、このコマーシャルも楽しみにしているヤカラがいるくらいです。
そして、最もお金のかかったショー、ハーフタイムショーがあります。いつも、その年に活躍した、最も人気のあるトップスターを呼び、アメリカンフットボールのグランド全体を使って派手派手の狂想曲のようなショーを繰り広げます。今年はリアナ(Rihanna)が抜擢され、3,000人のスタッフ、ダンサー、1,300万ドルを使ったと言われている15分のショーを見せたのです。
ちなみに、このスパーボウルのハーフタイムショーに出ること自体、とてつもない名誉、宣伝になるので、シンガーのギャラはゼロだそうです。2020年のスーパーボールのハーフタイムショーに出たジャスティン・ティンバーレイク(Justin Timberlake)はその後、レコード(ツイツイ古い言葉が出てしまいました)、CD、ダウンロードの売り上げは534パーセントも一挙に上昇したそうですから、ギャラがなくても、十分以上の見返りがある……ものだそうです。
試合は、カンサスシティー・チーフスが試合終了間際に得点し、勝利しました。その2日後、2月15日に地元に帰って、戦勝凱旋パレードがありました。カンサスシティータイムズによると、50万人がチームのメンバーを迎えたとありますが…、いくら何でも50万人は大袈裟でしょう。それでも、ユニオンステーション前の広場は、文字通り身動きができないくらい、チームカラーの赤シャツで埋まっていました。
私はお相撲が大好きです。しかし、あのインタビューの酷さだけは、どうにもいただけません。「はい、そうすね、一番一番大事にとっていくだけです…」と、紋切り型の応えに終始します。アナウンサー、インタビューをする人が、お相撲さんの返答を見越し、推察してしゃべるだけで、肝心のお相撲さんは「そうすね」だけです。まるでインタビューになっていません。その向こうを張るかのような最悪のインタビューが、フットボール選手たちのものです。汚い枯れた声で叫ぶだけで、すでにでき上がっている酔っ払いの方がマトモに喋るのではないかしら…。
そんなこんなで、今年のスーパーボールを終えたのでした。
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