第793回:プラスティック万歳でホントに良いのか?
日本の生協で買い物をした時、薄いビニールの袋に2、3円ほどのお金を払わなければならず、驚いたことがあります。そんな微々たるお金を取って幾らの儲けになるわけでも無いでしょう…と思ったものです。じきに、ビニールの袋の代金を取るのは、お客さんが自分のショッピングバックを持って来ることを促進するためだと気が付きましたが…。
だいぶ遅れて、アメリカでも、スーパーにビニールの袋を置かなくなりました。大手スーパーのウォルマートでもお客さんが自分のショッピングバッグを持ってくるか、そうでなければ、薄いキャンバス製のショッピングバッグを50セントほどで買わなければならなくなりました。
これらはプラスティックの消費を少なくし、面倒なリサイクルに回すプラスティックバッグを減らす方向に僅かに軌道修正することになるのでしょう。それにしても、他にまだ膨大は量のプラスティック、ペットボトルの水、ジュース、牛乳類、清涼飲料水、それに加えて、肉、魚を丁寧にスタイロフォームのお皿に載せ、サランラップで包んだモノを買いますから、スーパーでの買い物はプラスティック、石油化学製品だらけです。
それに、子供のオモチャの大多数はプラスティック製品です。繊維類も化学製品全盛です。
アメリカだけで年間800万トンの石油化学製品、プラスティックのゴミを排出しています。その内、リサイクルに回されるのは9%だけで、あとはそれぞれの地方自治体が用意しているランドフィル(landfill;大きな穴を掘って、そこに放り込むゴミ廃棄場)というなんとも乱暴な処理をしています。プラスティックの種類によりますが、200~300年経っても土に還ることはありません。
先日、南極、北極の調査船に乗っていたスキー仲間が、調査のために獲った魚、海の動物のすべて100%、胃袋からプラスティックが見つかったと嘆いていました。
アメリカのメイジャーと呼ばれている石油会社、エクソン・モービル、シェブロン・フィリップ、ダウ・ケミカルなどは、海、川の大掃除に1,000億ドルを拠出すると発表し、本格的に海や川をきれいにする姿勢を示しました。
それはとても良いことには違いないのですが、同時に総計で6兆5,000億ドルかけて、プラスティック=石油化学工場を建設する方針なのです。それも、巧みに規制の緩い東南アジア、中近東の国々に333の工場を建て、現地生産する計画なのです。
確かに、それらの国々にとっては、雇用も増え、製品を周囲の国々に安く提供できるので、経済効果は万点かもしれません。しかし、世界の空が繋がっているように、大きな河から吐き出されるゴミは海へ流れ、世界の海を汚すことになります。
もう大国、豊かな先進国だけが、キレイゴトを言い、公害やプラスティックの汚染を規制しても、意味がない時代になっていると思うのです。公害のツケを発展途上国に回せば済む問題ではないのです。
数年前のことになりますが、沖縄の座間見島に遊んだ時、浜辺に打ち上げられた大量のペットボトルに中国語が書かれているのにショックを受けました。“名も知らぬ、遠き島より流れつく椰子の実…”と、ロマンチックに唄うことができた時代ではなさそうなのです。
あらゆるプラスティックを有効な燃料に変える技術は、十分に存在するのだそうです。なぜそれをやらないかと言うと、ただ、それを実現するための工場建設にお金がかかりすぎ、そこから得た燃料を売るだけではとてもペイしないからだそうです。それには、政府が本腰を入れて乗り出し、リサイクル工場建設、運営に、大掛かりな援助をしなければなりません。
一旦汚してしまった河川や海を清掃するのは、とてつもなく大変な仕事でしょう。しかし、それをやらなければ、世界中の珊瑚礁が死滅し、魚介類も激減し、やがて人類も……同じ運命に遭遇するのではという危惧を持ってしまいます。
柄にもなく、と同時に、私にしては大きすぎる問題を書いてしまいました。
第784回:お犬様、お猫様、ペット様様
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