第794回:お犬様、お猫様、ペット様様
2ヵ月にわたるスキー三昧の生活を終え、雪ヤギグループとジャーまた来年ね…と別れてきたばかりです。
今年借りたアパートは、サライダの町の中心から程よく離れていて、しかも交通の便も良く、コジンマリとした部屋割りで、二人で過ごすには十分以上の設備もあり、今まで何年かあちこち渡り歩いていたのを止め、そこに来年も来ようと、もう予約してきました。
大家さんの女性主人がおおらかな付き合いやすい性格なのも、そのアパートの好条件に加えても良いかと思います。
そのアパートは、ムクムクした毛の長い猫付きだったのです。私は猫が大好きですし、どちらかといえば犬人間のダンナさんも、このオットリとした老ネコ“バートン”が気に入ったようで、バートンの方もすっかりダンナさんに懐き、彼の手を舐めたり、髭をダンナさんの脚に擦り付けたりするようになりました。
ソファーに座っていると、バートンは必ず、ダンナさんの膝に頭を乗せゴロゴロやるのです。一つだけ困るのは、私の高校時代の友人、知人などがペットの犬を連れて来ることができないことです。
アメリカでは、最近、日本もそうなってきたようですが、ペットをどこにでも連れて歩き、当然のように家の中に上げます。犬は中に入れないで、外に繋いでおいて…とは、とても言えない雰囲気なのです。もし、そんなことを言おうものなら、一挙に友情が崩れかねません。ですから、前もってこのアパートには猫がいるので、他からのペットは入れることができませんと断っておき、それで良いなら、何時でもドーゾいらしてくださいと、言うことにしました。
話が逸れてしまいましたが、17歳という老齢の猫、バートンには、ドライフードと缶詰のキャットフードを与えていました。もちろん、大家さんが大量に買い置きしたものです。小さな缶の魚味(自分で味見したわけではありませんが、結構強い魚の臭気が漂ってきますので)のモノで、食べ残しても、腐るといけないので毎日取り替えます。相当、無駄が多いのです。それに猫のトイレ? ツブツブ状の防臭剤が入った、大きめのお皿(便器)も清掃します。
世話としては時間もかからず、簡単なのですが、48個入った缶詰の箱を見てびっくりしてしまいました。その値段に驚いたのです。缶に入ったペットフードは1個1ドル以上するのです。それにドライフードや便器に入れるなんと言うのでしょうか、荒い砂のようなペット・トイレ用の消臭剤と、猫の維持費はとても高くなります。
ダンナさん、「オイ、この猫は俺たちより、ズーット良いものを、高いものを食っているぞ。俺が育った時、犬猫の餌は残飯に味噌汁の残り、それに魚の骨と頭くらいのもんだったけどな~」と、まるで時代の違ったことを言っています。今時、日本でもペットに残飯なんか、食べさせないと思うのですが…。
ペットの持ち主は、自分のペットが最高に愛らしく、何をやっても可愛いと感じる気持ちは分からないでもありませんが、それにしても、私の周囲にいるペット狂は大変な入れ込みようで、たいしてお金持ちでもないのに、ペットに掛けるお金は、ペットフード、獣医の検診料、ペット専門のシャンプー美容院と半端ではありません。可愛い自分のペットのためなら、まさにお金に糸目をつけません。
どうりで、雑誌にペットフードの宣伝がやたらに多いわけです。太り過ぎのペット用のダイエットソーセージ、高血圧防止のため、神経痛やリュウマチに良いもの、老化防止に役立つもの、毛並みが良くなるものと、マアー、人間の健康食品並にありとあらゆる種類が網羅されています。
このペットフードの業界は、とてつもなく巨大で、2022年にアメリカ国内で消費されたペットフードは103.6ビリヨンドル(約1,400億円)[American Pet Productによる]に上り、アメリカにはペットバカがたくさんいると見込んで、海外からの売り込みも盛んです。中でもトルコ、ハンガリー、アイルランド、フランスの商品は、アメリカ国内でも大きなシェアを占めるようになってきました。
テレビのコマーシャルでも、猫用の高級フランス料理でも売るかのように、フランスの大女優を使い、いかにもフランス訛りの英語で宣伝に務めています。まさか、アメリカの猫がテレビコマーシャルを観て、「私にアレを食べさせて! 」と言うわけじゃないでしょうけどね…。
すべて、飼い主のスノッブをくすぐるだけなのですが、オタクの世界には外目には分からない、微妙な事情があるのでしょうね。
でもこれは、食品だけのことで、アメリカに何千、何万とあるペットショップに足を踏み入れて、驚いてしまいました。まるでブティックのようなのです。ありとあらゆる犬、猫を対象とした衣服、靴、帽子、ベッド、遊び(遊ばせ)道具、首輪だけでも100種類はあったでしょうか、しかも、それらは一々、人間様用のモノより数段値が張るのです。
日本食は身体に良いと世界中で流行り始めました。一つ、ペットフード業界にも進出し、本マグロのトロを使い、お米もコシヒカリかササニシキの本格的ペット用握り寿司なんか、きっとマニアが争って買うと思いますが…。
地球上で飢えている人が2,000万人以上と言われている時代に、自分のペットだけを盲目的に可愛がるのはチョット問題ありだと思うのですが、それはまた全く別の次元のコトなのでしょうね…。
第795回:少子化と超老人の時代
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