第486回:ロッカールーム(更衣室)での雑談が・・・
アメリカの大統領選挙がいよいよ近づいてきました。
ヒラリー・クリントンとドナルド・トランプとの一騎打ちの選挙になるのは確実です。あれだけ言いたい放題を歯に衣着せず放言していたトランプが選挙が近づくにつれ、彼が抱えているブレーンの入れ知恵でしょうか、暴言を控え、女性やゲイ、ホモセクシャル、メキシコ系の人たち、モスリムの人たちを刺激するような言動を控えるようになってきました。
何度かヒラリー VSトランプの討論が行われ、テレビで実況中継されました。ところが、自分の政策を具体的に述べるのではなく、ただ相手をやり込めることだけに力を入れ、言ってみれば手の良い口喧嘩、こき下ろし弁論なのです。
司会者の質問、きわめて限られた視聴者からの質問にも故意に正面から答えず、横道に逸れ、自分を売るような答弁ばかりなのです。どうにもアメリカにこの二人以外他の人材はいないの?と嘆きたくなります。両者の支持率も先月まで2、3%の差しかない接戦でした。
と、過去形で書いたのは、トランプが2005年に私的な場でコメントした録音テープが見つかり、マスコミに流れたからです。アメリカのマスコミ、新聞、雑誌、テレビ、ラジオでも"Fuck"という言葉は禁句で4文字の罵詈語とか、F-wordとか、fxxxとか書き、放送ではピーという音で消してしまいます。
トランプは、"女どもは強姦されるのを望んでいるし、それだけの存在だ!"と盛んに"Fuck"を連発しながらわめき立てているのです。そのテープが流れてからトランプの支持率が下がり、ヒラリーとの差は11%ほど開きました。
先日、セントルイスで行われた討論会でその録音テープのことに言及されたトランプ、「あれは言ってみればスポーツ選手のロッカールーム(更衣室)での話で、今では女性をたいそう尊敬している」と弁明していましたが、時すでに遅しです。
このロッカールームだから、女性に侮蔑的な話をしても構わない…という態度に、なんとプロスポーツの選手らがこぞって反論し始めたのです。
NBAのスタープレイヤー、マッカラム(C.J.McCollum)は、「チームのロッカールームであんな汚い話は耳にしたことがない」と言い、メジャーリーグのシーン投手(Sean
Doolittle)は、「中学、高校、大学、そしてプロとして野球をやってきたが、トランプのはロッカールームの会話ではない」と述べ、アメフトのスパースター、ジェイコブ(Jacob
Tame)も、「プロスポーツの選手がロッカールームであんな話をしていると思われるのは心外でスポーツ選手にとって侮辱だから、ロッカールームだからという言い訳を認めない。ロッカールームという言葉を使わないでくれ…」と、それまでトランプ支持だと思われていたプロスポーツ界から総スカンを食ってしまったのです。
テニス界でグランドスラムを達成したマルチナ・ナブラチロワ(彼女はレズビアンで確か同性と結婚していたと思いますが…) は、「このような下品で女性蔑視の発言をするトランプの品性、本性をよく表している」と憤っています。
トランプの政党、共和党の主幹ポール・ライアン(彼は相当な右よりですが)は、「もう、トランプを政党として守れない」とまで、コメントしています。メインストリームの共和党員たちもトランプを積極的に支持しなくなってきています。
アメリカの政治が、政治の本質ではなく、スキャンダルに左右されるのは、なにも今に始まったことではありません。お金とセックススキャンダルが定番になっているのです。どうにも、こんなにレベルの低いことばかりが政争の焦点になるアメリカの政治に愛想が尽きてしまいます。
アメリカでは選挙の度に、車にバンパースティッカーや家の前に支持政党や応援する立候補者の名前とコメントを書いたプラカードを立てます。団地の庭先はかなり賑やかなことになります。ところが今回の大統領選挙では、その庭先のプラカードが極端に少ないそうです。 トランプは嫌いだけど、かといってヒラリーも好きになれない人が圧倒的多数だからでしょう。
今のアメリカのように人々が政治的関心を失うこと、誰が大統領になろうが何も変わらない、という諦めや投げやりな気持ちになるのは、その国にとってとても危険な状態なのですが…。
第486回:ノーベル賞の怪か快挙か?
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