第732回:税金はどこから来て、どう使われるのか?
2021年11月02日にアメリカの中間地方選挙が行なわれました。いつも不思議に思うのですが、アメリカ政府の財政、国家予算は、他の国に比べて群を抜いて膨大な金額(485兆円相当)です。トランプ大統領の時に赤字が110兆円を越して以来、毎年大変な赤字続きで、それでいて政府が潰れないことです。これが普通の企業なら、ペッシャンコに潰れているでしょうし、その会社の社長さん、上層部は株主に対して責任を取り、とっくに辞職していることでしょう。
入ってくる見込みのない税金を使いまくっても許されるのが国家財政のようなのです。アメリカの歳出の40%以上は借入金、借金で賄われています。赤字財政のトップは日本で、なんと国家予算の270%もの借金をしているのです。借金ランキング第2位のイタリアでさえ150%です。こんな不健康な財政を見ていると、第一次大戦後のドイツを思い起こします。すざまじいインフレになり、結果、ナチスの台頭を許してしまったのだと思ってます。
“国の財政を立て直す”ことを選挙のキャンペーンに挙げても、票に結び付かないのだそうです。もっと身近なこと、些細なこと、生活に密着したことをキャンペーンに打ち出さなければ国民に訴えることができないと言うのです。
今回の地方選挙でも、私たちの地元の高校を建て直す特別予算を確保するため、増税するかどうかが焦点になりました。アメリカの州、その下の郡、そして市は独立した財政を敷いています。消費税のパーセンテージですが、地方自治体は州が決めた枠内で設定し、徴収します。私たちの住んでいるメッサ郡では8.52%です。それに、固定資産税は地方自治体に行きます。ですから、消費税のない州、オレゴン州などでは、州の財政を確保するため、固定資産税が高く設定されています。
今回の選挙でも、コロラドに別荘持つ他の州の人への固定資産税をコロラド人より高くするかどうかの直接投票の条項もありました。そうなると、コロラド人(州に所得税、地方税を払っている人)の超大金持ちが州内に別荘を3、4軒持っている場合はどうなるのかと、お金持ち別荘族にはそれなりの問題があるんですね。これは投票の結果、没になりました。
バイデン大統領は、年収10ミリヨンドル(1,000万ドル=11億円相当)の人に増税する法案を議会に提出しました。そんな大金持ちがゴソッといて、しかも共和党へ莫大な政治資金を提供してるのでしょう、民主党はこぞって反対しています。
誰にとっても公平な税制など存在しないのは明らかですが、アメリカでは…だけでないでしょうけど、税制をうまく利用するのが成功するための一つの条件になっているようなのです。 アマゾンのジェフ・ベゾスさんの大成功は、一つに企業税の安いシアトルに本拠を置き、メールオーダーで云わばタックスフリー、州の消費税抜きで、他の州に品物を郵送したことでしょう。香港の免税品を日本に売っているようなものです。
コロラド州でのマリファナに掛けた25%の税収入は、昨年266ミリヨンドル(293億円相当)にもなりました。でも、これもいつまで続けることができるのか大いに疑問です。周りの州も徐々にマリファナ解禁に踏み切っているからです。ウチの州からマリファナ買付ツアーがたくさん出ており、オラが州の人が、コロラドで買い物をして、コロラドだけに儲けさせてなるものかと言うことでしょうか。
マリファナは吸わなければ済む問題ですが、車社会のアメリカで車なしに生活ができる地域はとても限られいます。必需品なのです。そして、車を動かすためのガソリン、ディーゼルも空気のように欠かせません。ガソリンの税金は、州ごとに驚くほど違います。
私たちは車でよく旅行します。よく行くミズーリー州のガソリンの値段は、西部のカルフォルニア、オレゴン、ワシントンのほぼ半額です。ガソリンの税金は、道路や橋のメンテナンス、建設に使われますが、オハイオ州ではそんな費用を捻り出すためにガソリン税を上げ、1年で850ミリヨンドル(935億円相当)の税収入を得ています。
私が勤めていた大学のある町(人口10万人内外です)の主な産業は、老人ホーム、これがやたらにたくさんあります。それに関連して、病院、それに大学でしょうか、余程お金が余っているのか、やたらに道路工事が多く、一体また何のため…と言いたくなる工事が、いつもどこかでやっています。
市の土木課の偉いさんの発案でしょうか、十字路をロータリー(ランウドアバウトと呼んでいます。パリの凱旋門のようにグルグル回る道路)をそこここに造り、真ん中にどうしようもない塑像、記念碑を建てています。それも一つや二つではないのです。そこら中ロータリーだらけなのです。
ロータリーは道路が十の字に交わっておらず、色んな角度で何本も交差している場所には、とても有効な道路造りだと思います。田舎町の狭い道路に、ちっちゃなロータリーを造っても意味がない…と、ほとんどのドライバーは思っているはずです。ロータリーが好きなトラックの運転手に出会ったことがありません。
全く必要がない…と信じているのですが、土木工事が行われるのは、その年度の予算を使い切らないと、翌年の予算が削られるからだそうです。国や州の予算は、コロナが蔓延し、その応急対策に膨大なお金が必要になったからと、土木工事や他の公共事業予算から医療に回すことができない仕組みになっているらしいのです。
日本では、膨大な赤字財政の中でも国がどうにかうまく作動しているようにコチラからは見えます。ウチのダンナさんによれば、「日本には、いざとなったら埋蔵金があるからな~」と言っています。
アメリカでは、未だにホワイトハウスや議事堂の地中から“埋蔵金”を掘り当てていません。
-…つづく
第733回:自閉症の子供を持つ親たちへ
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