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■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から
 

第876回:「若き日は再びあらず、、、」

更新日2024/11/21


この「見よ 勇者は帰る」は、日本の国体(国民体育大会)で必ず演奏される曲だそうです。荘厳だけど、さあこれから思いっきり汗を流して競い合うぞという、およそスポーツイベントに不向きな、血を沸き立たせるところがまるでない曲“君が世は~”の国歌に比べ、”若き日は~“スポーツの選手を高揚させる曲です。

元々ヘンデルがユダヤ教の祭日のために作曲したものだそうですが、すっかり国体や日本のスポーツ大会の曲になってしまったようです。

最近、ナツメロと言い切って良いと思うのですが、私の時代のフォークロックのスターが70−80歳になってから、再度舞台に立つことが目立ってきたように思います。若者相手のラップ、ポップスに負けられるかと思ってのことかどうか…、私の目がそちらに向いているからでしょうか、ともかく老フォークロック・ミュジシャンのコンサート、ツアーが結構多いのです。

多くの若い(当時は!…)ミュジシャンを取り上げてきたTV番組の『エド・サリバンショー』は、古い録画の中から、フォークロック、モータウン、ブルースなどを編集し直し、オールドロック・シリーズとして放映し始めました。

ビートルズが初めてアメリカにやってきた時の録画そして演奏、ローリング・ストーンズのアメリカ初公演、ジャニス・ジョフリン、エルヴィス・プレスリーなどなど、大物がこぞって『エド・サリバン ショー』に出演しているのは壮観なほどです。彼らの大半というより60~80%はすでに鬼籍に入っていますが、まだ生き残りがいて、音楽活動を続けているミュージシャンもいます。

どういう理由からでしょうか、老齢になってもレコードではなくCDですね、を出し、コンサート活動を続けているミュージシャンはイギリス人やアイルランド人が多く、アメリカ人は少ないのです。アメリカ人ミュージシャンはドラッグで早死にしているせいかもしれませんね。ジャニスやジミィ・ヘンドリックスのように…。そうでなければ、プレスリーやマイケル・ジャクソン、カレン・カーペンターズのように奇妙なダイエットの薬で死んでしまったのでしょうか…。
 
そして、リバイバル・コンサートです。どうしてイギリスのロックスターはああまで見るからに麻薬中毒患者みたいな顔、容貌をしているのでしょうか。元々ブ男揃いの英国ロックスターですが、ミック・ジャガー、キース・リチャードなど、そのままドラッグ・ディーラーの指名手配写真になっても良いくらいです。そうでなければ、エルトン・ジョンのように中年から老年の醜い太り方の典型になってしまっているのです。
 
逆に若い時より、年齢を経た今、おそらく80代になってからの方が、顔、容姿ともに良くなっている、見られるようになっているスターもいます。83歳のリンゴー・スターなどはその例でしょうか。

ジョーン・バエズは若い時、とても清楚で綺麗でしたが、例外的に美しく歳を重ねた人でしょうか、若かりし頃売りだった流れるような黒髪をスッパリ切り、白髪の勝った髪をショートカットにして、声こそ往年の艶やかさはありませんが、まだ声に充分なノビがあります。珍しく、綺麗に歳をとった人です。

プロのミュージシャンですから(でしたから…)、自分の声の音程が狂ってきていることに気が付かないはずはないと思うのですが、ポール・マッカートニーのコンサートは悲惨でした。声にハリもノビもなく、しかも音程が狂うのです。彼ほどの音楽家でさえも、歳には勝てないのでしょうね。
 
デビュー当時から爺むさい人は得なようです。レナード・コーエンやニール・ヤング、ボブ・ディランはデビュー当初から爺むさい年齢不詳の様相だったし、一体この人たちに青春が輝いた時があったのかしらと思わせます。ですから、中年、老年になっても若い時の演奏、唄声と変わらなく聴こえます。
 

私が住んでいる町は、引退した老人が多く住んでいます。ピンからキリまでの老人ホームがたくさんあり、大きな病院もあるので、この町の特徴といえば、大学と老人ホームということになるかもしれません。

そんなところですから、養老院訪問というわけではないでしょうけど、結構ナツメロ的な、昔のフォークロックのスターたちがよくコンサートを開きます。ジュディ・コリンズは毎年のように来ているのではないかしら。

老齢の本物のスターも来ますが、そっくりさん、ラスベガスでは何人のプレスリーを見かけたことやら、それほどではありませんが、容姿よりも歌のマネが上手な、ほとんど本物よりも上手いそっくりさんがやってきます。

サイモンとガーファンクル、キングストン・トリオなどのモノマネで、彼らが回るツアーのルートに入っているのでしょうか、これからの冬から春にかけて、アレっ、彼らまだ生きていたの?と一瞬ドキッとさせられますが、もちろん、モドキの偽者です。それでも結構満員になるらしく、完売になるコンサートがたくさんあります。

何年も前のことになりますが、両親を連れてそんなコンサートに行ったことがあります。いや~、1,000人ばかりの中ホールですが、見事に白髪とハゲばかりでした。そして、彼ら爺さん婆さんは、私もその歳ですが、実によくノルのです。つまらない冗談にまるでタイミングを図ったように爆笑し、体を揺すりながら全曲一緒に唄うし、それはそれは全身で楽しんでいるのです。

彼らが生きてきた、過ごした青春の1ページを開き、声を出して詠んでいるようなモノなのでしょう。もう二度と帰らぬことを知りながら。それにしても、彼らが何かに打ち込み、燃えるようなひと時を持ったのはとても幸せなことだと、奇妙な感慨に囚われました。

 

 

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Grace Joy
(グレース・ジョイ)
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中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。

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