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■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から
 

第925回:ヴェテランとは誰のこと?

更新日2025/11/20 



今日、これを書いている11月11日はヴェテランズ・デイ(退役軍人の日)です。あらゆるアメリカの行事が即日本に移植され、派手なお祭り騒ぎに発展する傾向がありますが、このヴェテランズ・デイだけは日本で決して祝うことはないでしょうね。日本でハロウインとかサンクスギヴィングが奇妙に流行り出したようには。でも、考えてみるまでのこともないのですが、日本でクリスマスが大きな年中行事になっているのも奇妙な現象ですが…。

ヴェテラン(Veteran)とは、研究社の英和大辞典によれば、労連家、千軍万馬の古つわ者、例として法曹界の~~とあり、加えて米語として“退役軍人”とあります。実際にアメリカではヴェテランといえば、それは退役軍人のことを指し、ヴェテランの看護婦さんと呼べば、経験豊かな、優れた看護婦さんではなく、兵役に長いこと就いたことのある看護婦さんの意味になります。
 
独立戦争以来、戦争ばかり続けてきたアメリカでは、戦勝記念を祝っていては、年の大半が戦争記念日になってしまいます。そこで政府も考えたのでしょう、軍人の日を作れば今まで世界中に起こしてきた戦争、騒乱すべてに参戦してきた兵隊さんを祝ってあげることができる、そこで1956年6月にヴェテランズ・デイを制定したのです。

ですから、この日が特別な戦勝記念日というわけではありません。それどころか、1950年代から60年と不人気だった朝鮮戦争、ベトナム戦争に参戦した帰還兵はパレードどころか、アメリカに戻ってきた時、反戦運動の嵐の中で「子供、赤ちゃん、殺し!」と、ツバでも吐きかけられない時勢でした。

ところが、いつの頃からでしょうか、やたらに退役軍人をチヤホヤするようになり、パレードも年々大きく、派手になり、ベトナム帰還兵ですら金文字で大きく“ヴェトナム・ヴェテラン”と縫い書かれた帽子を被り、英雄然として行進するようになってきたのです。

戦争自体が是か非と問う前に、兎にも角にも“アメリカン・デモクラシーを守るために”戦場に行ったこと、実際には義務兵役のドラフトに引っかかったので、しょうがなく兵役に就いたのでしょうけど、今になって祭り上げているのです。
 
ベトナムでは無差別の虐殺、飛行機からばら撒いたナパーム弾、枯葉作戦の毒薬などで殺しまくったことへの反省など全くありません。本来ならアメリカが敗戦国ですから、なんらかの形でベトナムへ保証、損害賠償をするべきでしょうし、戦争裁判を開き、無差別殺戮を行った軍人を戦争犯罪人として裁くべきなのですが…。
 

ディーンお爺さんとは、タップダンスの授業で一緒になりました。私が出会った時、ディーンお爺さんは80歳前後だったと思います。そんな年寄りがタップダンスを始めるのは凄いことだ、偉い!と、20歳台の生徒さんたちの中では群を抜いて年寄りの私は、ディーンお爺さんを晩御飯に呼んだり、一緒にお昼ご飯を摂ったりして、彼が第二次世界大戦でノルマンジー上陸作戦の最初の上陸兵であったことを知り、現代史の先生に歴史の証人として紹介したのがきっかけだったように覚えています。

それまでディーンお爺さんは自分の軍歴を誇るわけでもなく、自分を撃ってきたドイツ兵も自分と同じように政府に招集され、しょうがなく兵役につき、アメリカ兵、イギリス兵を撃つように命令され、それに従っただけだと、現実をしっかりと認識したクールな見方ができる人だったと思います。

近代史の授業で、ノルマンディー上陸作戦の生きた証人として何度か授業に登場し、これも私の責任?なのですが、地元の新聞にディーンお爺さんのことを紹介したところ、カラー写真入りの記事になり、その頃から、ディーンお爺さんへコンタクトする在郷軍人会、ヴェテランがあり、“第二次大戦、ヴェテラン”と金糸で縫い上げた野球帽を被り歩くようになったのでした。
 
この帽子は水戸黄門の印籠の家紋のような効果があり、大半のファミリーレストランは10~20%引き、大手のハードウェア屋(ホーム・デポ、ローズなど)も割引、果ては私が愛用している救世軍のリサイクルショップまで20%内外の割引を提供しているのです。

ホームレス・シェルターでボランティアをしている時、大きな倉庫みたいなシェルターの中にビップクラス?のような一角があり、ソファー、安楽椅子、大きなテレビなどが置いてありました。それはヴェテランのホームレスのためのコーナーでした。

そして今日、ヴェテランズ・デイです。この人口たかだか10万人少々の町にこんなに大勢の退役軍人がいたのかと驚くほどのお爺さんヴェテランがパレードを繰り広げます。第二次大戦組、これは三分の一くらいは車椅子かしら、そして朝鮮戦争組、一番多いのはベトナム戦争組、それからイラク、アフガニスタン組と続きます。

ハーレーダヴィソンに跨った一団もこの時とばかり、星条旗をデザインしたジャケットを着込み、バンダナを締め、大きな国旗をモーターサイクルの後ろにはためかせ行進します。道路脇には彼等の家族でしょうか、結構子供連れが目立ちます。

そして、何より嬉しいのは(彼等にとってです)数多くのファミリーレストランがこの日に限りヴェテランは何を注文してもタダ、無料のサービス行っていることでしょう。

今では誰もヴェテランに向かって「子供 女殺し!」などと言って唾を吐きかける人はいません。それどころか「お国のために、どうもありがとう」と声をかけるのが当たり前の礼儀になってきています。

アメリカの国中で、ヴェテランを甘やかすにいいだけ甘やかしているのです。
そこには、対戦国に対する思いやり、自分がしてきたことへの反省が全くありません。

極々少数ですが、ヴェトナム戦争後、自分がやってきた殺戮がいかに酷いものであったかに目覚め、私費でベトナム復興の手助けをしている元戦闘機パイロットのような人もいます。
「爆撃機に乗っていると、不思議に爆撃される人がジャングルの中にいることなど考えないものだ」と告白しています。

彼はヴェトナム復興支援グループを組織し、同僚のヴェテランたちに声を掛けていますが、戦友たちから国賊、裏切り者扱いされるだけだったと言っていました。 
 
もちろん、彼はヴェテランズ・デイのパレードに参加したり、金ピカのヴェテラン野球帽なんか被らないでしょう。星条旗を振り回し派手派手しく行進しているヴェテランたちは、彼のような軍人がいることなど、全く知らないのでしょうね。マスコミも軍楽隊に導かれたヴェテランのパレードばかり報道しています。

-…つづく

 

 

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Grace Joy
(グレース・ジョイ)
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中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えていました。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。

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