第749回:何でもかんでもコロナ禍のせい
新型コロナウイルスが全世界を襲ってからもう2年以上になります。敵もサルもので、様々に手を変え品を変えて、人類が必死になって対応し作り上げたワクチンの隙を突いて新しい変異株で迫ってきています。まだまだ終焉の見通しは立っていませんが、何とか上手に新型コロナやその変異株と付き合って行けるのでないかと楽観し始めています。
このところ、アメリカ全土で不動産の値上がり酷く、2、3年で価格が倍になったという家も珍しくありません。先日泊まりに行ってきた大学町ボルダーの友人の家、隣同士のスペースがほとんどなく、クッツキ合っているような細長い土地に建てられた本来、極々普通のサラリーマン、労働者が子育ての場所にしていたような地区ですが、ガレージもなく路上駐車をしなければならないようなところが2.5ミリヨンドル(3億円相当かしら)の値段が付き、それでも空き家が出ると、言い値以上ですぐに売れてしまうと言うのです。一体全体、どこの誰が買うのかしら、と思いたくなります。
私たちが住む町でも、コロナ禍の前に比べ50~70%も値上がりしています。私たちの家の郵便箱にも、不動産屋さんから、買い手がいるから、今すぐに売らないかという手紙が随分舞い込むようになりました。確かに、この家、土地を買った12-13年前の何倍かで売れたとしても、そのお金で買える別の土地、家などないのです。
この現象も、コロナ禍でそれまで旅行や外で使っていたお金を家に回すようになったからだと説明されています。どこか、日本での一時期あったバルブ時代を思わせます。賃借アパートや貸家も、昨年比で17%値上がりしています。
2年前、新型コロナが始まったばかりの時、飛行機やクルーズはまだ危ない、それならキャンピングカーで山裾や海岸を回ろうかと、キャンピングカー・ディーラーを回ったことがあります。考えることは誰でも同じと見え、そこには在庫がなく、注文生産で半年、1年待ちだと知らされ、ガックリきたことがあります。
車の中古の価格も昨年比で37%アップです。何でもかんでもアップアップしていて、貧乏な私たちは溺れそうです。
何百万という人たちが通勤せずに自宅でインターネットを通して働くようになりました。通勤ラッシュアワーの交通渋滞が多少なりとも改善された…と思いきや、交通事故死の数は新型コロナ以前より18%も増え、死亡した人は全米で36,680人に及んでいます。これも自宅勤務でいつもより空いた高速道路をかっ飛ばしてやれと、無謀な運転をする人が増えたためだとされています。スピードの出し過ぎが一番の原因であることは明らかです。それに加えて、スマホでテキストを入れながらの運転、携帯で話しながらの運転(これは酔っ払い運転と同じくらい危険です)、それにマリファナやEシガレットでハイになっての運転が加算されます。
先週、13歳の少年が運転するピックアップトラックが、ゴルフの試合に行く大学生を乗せたスクールバスに正面衝突しました。バスに乗っていた大学生7名、それに正面から突っ込んできたピックアップトラックを運転していた13歳の坊やと、運転させていた38歳の男性が即死しました。
いくら車社会のアメリカでも13歳にたとえ保護者が脇にいても、運転を許可している州はありません。この事故なども、今なら群道は空いている、俺が横に付いているから大丈夫だと、38歳の保護者が13歳の坊やに運転させたために起こった事故でしょう。
アメリカでの交通事故死は、人口当たりで比べると、他の国々に比べ2倍以上になっています。これは、単純に交通事故の死者数を全人口で割った数字ですから、公共の交通機関がほとんどないアメリカで、車で通勤、通学するのが当たり前の状態を考慮していません。車の走行距離、使用時間などは計算に入っていません。例えば、私が現役で働いていた時、通勤に往復2時間、80キロに車を使っていました。それをいきなり日本のマイカー族の土日遊びに出かける人の走行距離と比べるわけにはいきません。ほとんどが私の年間走行距離の何分の一になるのではないのでしょうか。
特に酷いのは、歩行者を跳ね、死亡させる事故です。10年前に比べ50%も増え、6,600人が命を落としています。人身事故は主に大きな街中で起こっています。この主な原因はスピードの出し過ぎ、そして徐行、ストップサインの見落としですが、これも、社会学者はコロナ禍で空いた道路でスピード制限を守らずに運転するせいだとしています。
首都ワシントンでは昨年、この13年間で最高の(最悪というべきなのでしょうか…)人身事故の死者40名、負傷者4,000人を記録しています。そして、大都会ニューヨークでは2020年に事故死243件という最高記録をマークしているのです。
アメリカ人はいつも“俺は俺”だと、外国から学ぶことをしません。スピード大好き人間が多いイタリア、スペイン、ベルギー、フランス、オランダで、スピード制限を低くし、スピード違反を厳しく取り締まり始めたところ、交通事故の死者が22%も減少しています。これは私たちドライバーが忌み嫌う監視カメラが大いに活躍しているからだとされています。
アメリカ式にシェリフのパトカーが隠れていて、スピード出し過ぎ、あるいは怪しげな車を赤、青のハデハデしいランプをくるくる回し、ゾッとするサイレンを鳴らして追いかけ、追い回すよりはるかに効果があるスピード違反の取り締まり方のようなのです。
そして元々、離婚、再婚が、アメリカ人の著しい特技、特徴でしたが、コロナ禍以降、ますます離婚に拍車がかかってきました。これは十分頷けることで、今まで朝、出勤すると、夕方遅くまで顔を合わせなかった夫婦が、インターネットでの自宅勤務で24時間顔を付き合わせることになりますから、イロイロなストレスが溜まってくるのでしょう。おまけに子供たちもコロナ禍のため休校になり、在宅自習になりましたから、ますます家庭内の平穏が乱されることになるのは大いに分かります。
何でもかんでも新型コロナのせいにしたがる心理も、コロナ禍が生んだ現象かもしれませんね…。
-…つづく
第750回:スキー転倒事故の顛末~医療編
|